■特定処遇改善加算について
2019年10月の消費税率引き上げにあわせ「基本単位数の引き上げ」(消費税対応改定)と「特定処遇改善加算の創設」という2つの介護報酬改定が行われます。
1.概要
介護業界においては深刻な人材不足のため、これを解消するためにリーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現することが、今回の賃上げの目的です。
2.取得要件
特定処遇改善加算の取得要件となっているのは次の3つです。
要件1 現行の介護職員処遇改善加算1から3までを取得していること
介護職員処遇改善加算とは区分ごとに設定された要件を満たした介護事業所で働く介護職員の方の賃金改善を行うための加算で、加算1から加算5があります。
このうち加算1から3のいずれか現行行っていることが必要です。
要件2 介護職員処遇改善加算の職場環境要件に関し、複数の取組を行っていること
職場環境等要件は、「資質の向上」「労務環境・処遇の改善」「その他」の3つの区分に分けられており、それぞれの区分で1つ以上の取り組みを行うこと等が必要です。
《例》
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・雇用管理改善のため管理者の労働・安全衛生法規、休暇・休職制度に係る研修受講等による雇用管理改善対策の充実
・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の所在の明確化
・非正規職員から正規職員への転換
要件3 介護職員処遇改善加算に基づく取組において、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること。
職場環境等要件に取り組むだけではなく、活動の実態が外部から認識できる状態にしなければいけないとされています。
現在、利用者が適切に介護事業所を比較・検討できるよう、事業者が年に1回、最近の介護サービスの情報を都道府県に報告し、都道府県がその内容をインターネットに公表する情報公開制度が設けられています。
見える化の具体的手段として、情報公開制度に基づく報告において、賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容の報告を行います。
3.勤続10年以上の介護福祉士がいなくとも、要件を満たせば特定処遇改善加算を取得可
特定処遇改善加算は、おもに「勤続10年以上の介護福祉士」の処遇改善を行うための原資を提供するものです。もっとも、各介護事業所等の判断で「それ以外の職員」(介護職員、介護職員以外)の処遇改善にも柔軟に充てることが可能です。
具体的には、一定の要件を満たした介護事業所等((介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリ、(介護予防)居宅療養管理指導、(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、居宅介護支援、介護予防支援は除く)において、「利用者に提供したサービスに係る介護報酬」に加算を上乗せして請求することができます。サービス提供体制強化加算などの取得事業所等では、より高い加算率が設定されています。
なお、法人単位(介護事業所等を開設する法人単位)で特定処遇改善加算取得を申請することも可能で、その際には次のような点に留意することが必要です。
▽法人単位で「月額8万円の処遇改善となる者」「改善後の賃金が440万円以上となる者」を設定・確保すること、「経験・技能のある介護職員」「その他の介護職員」「その他の職種」の設定が可能である。
▽法人単位で「月額8万円の処遇改善となる者」などを設定・確保する場合であっても、事業所等の数に応じて「月額8万円以上の処遇改善等が1人以上」となることが必要で、月額8万円以上の処遇改善となる者が法人内に1人だけでは要件は満たさない(なお、小規模事業所等がある場合には、合理的な説明を条件に、当該事業所等に「月額8万円以上の処遇改善等」がいなくともよい)
▽法人内に加算1・加算2が混在していても一括の取得申請が可能(ただし未取得事業所や処遇改善加算の非対象サービス事業所(訪問看護など)、介護保険制度外の事業所については一括した取扱いは認められない)
4.各職員の賃金・改善額リストなど積算根拠資料の準備をしましょう。
新たな特定処遇改善の取得にあたって、各事業所等では都道府県知事・市町村長(介護サービス等の指定等権者)に対し「処遇改善計画書」(処遇改善の内容など)や「実績報告書」(処遇改善の実績など)を提出する必要があります。
その際、都道府県知事や市町村長が「適切に処遇改善がなされているのか」を判断できるよう、各事業所等では「積算の根拠資料」(各職員の賃金額や改善額のリストなど)を準備しておくことが求められます。
8月頃に計画書等の提出が必要となりますので、それまでにどのような取り組みをするべきか、お困り事がございましたら、ぜひご相談ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。