浅井順

2024年8月8日|カテゴリー「浅井順
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■障害児通所支援事業における運営指導について

こんにちは。行政書士の浅井です。
本日は障害児通所支援事業における運営指導についてお伝えします。


1.運営指導(旧 実地指導)とは?
運営指導(旧 実地指導)とは、原則として行政の担当者が事業所を訪問し、「適正なサービスが提供されているか」を面談形式で指導(調査)するものです。もともとの名称は「実地指導」でしたが、令和6年度(2024年度)より「運営指導」に変更されました。

〇運営指導の目的と種類とは?
運営指導の目的は、「事業所のサービスの質の確保」と「障害児通所給付費等の適正化」です。そして指導方法には、「運営指導」と「集団指導」の2つがあります。
「運営指導」は事業所において実地で行われ、「集団指導」は事業者を1か所に集めて講習などの方法により行われます。運営指導への名称変更により、集団指導はオンラインでも実施されるようになりました。

〇運営指導と監査の違い
「運営指導」と混同されがちな用語に「監査」がありますが、これらの性質はまったく異なります。運営指導はあくまで指導(調査)ですが、運営指導中に下記の運営基準違反などの状況が確認された場合や、自治体へ通報・苦情などがあった場合に「監査」へと移ります。
・著しい運営基準違反が確認され、利用者等の生命または身体の安全に危害を及ぼすおそれがあると判断された場合
・障害児通所給付費等の費用請求に誤りが確認され、その内容が著しく不正な請求と認められる場合

監査は、不正や著しい不当が疑われる場合に事実関係を的確に把握し、公正で適切な措置を採る目的で実施されます。監査の結果、不正や著しい不当が認められた場合には、勧告や命令、障害児通所給付費等の返還、果ては指定の取り消しなどの重い処分が下されることになります。

事業所としては監査にならないのはもちろん、運営指導に備えた日頃の取組みが重要になります。後述のように、運営指導に備えるにはスタッフ全員が適正な運営方法を押さえることと日々の記録業務などの抜けや漏れを防ぐ体制を作ることが大切です。


2.運営指導(旧 実地指導)ではどのようなことがチェックされるのか?
それでは次に、運営指導が実施される頻度や当日チェックされるポイントについて見ていきましょう。

運営指導はどのぐらいの頻度で行われるのか?
「運営指導」の場合、おおむね3年に1度実施されます。ただし、運営等に重大な問題があると認められた場合には、1年に1回実施されるなど指導の重点化がなされます。そのほか、自治体が必要と認めた事業所を対象に実施されることもあります。

運営指導が実施される際には、原則、自治体からの通知文書が実施予定日の1か月前に事業所へ届きます。なお、事業所で障害児虐待が疑われているなどの理由がある場合には、通知の予告なく運営指導が実施されます。

一方、「集団指導」の場合、新規の障害児通所支援サービス事業所にはおおむね1年以内に実施されます。また、過去の指導事例等(費用の請求内容や虐待事案など)に基づく指導内容に応じて、対象となる事業所が選ばれて実施されることもあります。

運営指導でチェックされるポイントは?
運営指導でチェックされるポイントとしては、以下の「人員」「運営」「支援」「請求」などに関する書類があります。これら以外にも、「緊急時対応」「衛生管理」「業務継続計画(BCP)」「身体拘束や虐待」など多くの観点から確認されます。

【人員に関する内容】
勤務実績表
出勤簿(タイムカード)
従業員の資格証
勤務体制一覧表
利用者数(平均利用人数)がわかる書類(実績表等)
研修計画、研修実施記録 など

【運営に関する内容】
運営規程
利用者数がわかる書類(利用者名簿等)
重要事項説明書 
利用契約書
受給者証の写し
契約内容報告書 など

【支援に関する内容】
アセスメント記録
ケース記録
サービス提供記録
放課後等デイサービス計画(個別支援計画)
モニタリング記録
サービス担当者会議の記録 など

【請求に関する書類】
利用者負担の請求書、領収書
加算など報酬関係の資料 など

なお、自治体によっては運営指導の確認事項を自己点検できるよう、「自己点検シート」を提供しているところもあります。運営指導の前に、自己点検シートを入力し、事前に提出を求められる自治体もあります。


3.運営指導(旧 実地指導)に備えて普段から事業所で取り組んでおきたいことは?
上記のように、運営指導で確認される内容は多岐にわたります。事業所としては、運営に関するルールや知識をスタッフ全員が正しく理解し、様々な書類を適切に作成・管理する必要があります。そこで最後に、運営指導に備えて普段から事業所が取り組んでおきたいことをご紹介します。

〇スタッフ全員が適正な運営方法を押さえる
まずは、スタッフ全員が基本的な制度のルール(運営基準)や算定基準を理解することが重要です。これらの知識は適切なサービス提供や円滑な施設運営のために必須になります。

運営基準の例としては「利用から退所までの流れ」「人員配置」「請求業務」「緊急時対応」などがあり、算定基準としては「報酬の構造」や「加算・減算」の知識などが挙げられます。これらの内容を研修などを通じてスタッフが把握できるようにしましょう。

また、上記で取り上げた自己点検シートは、その自治体で求めている法令の基準について記載があり、できていることには「はい」を、できていないことには「いいえ」を選択するシートです。そのため、現時点でどういったことができていて、どういったことができていないのかを把握することができるので、1年に1回等、職員会議等を活用して、定期的に職員全体で自己点検シートの入力をしてみるということもおすすめです。

〇日々の記録業務などの抜けや漏れを防ぐ体制を作る
日々の業務であれば、サービス提供記録(支援記録)などの記録や請求データの抜けや漏れを防ぐことも大切です。サービス提供記録は、個別支援計画に基づいたサービスを提供したことの証拠で報酬の請求の根拠になるため、正確に記録をつける必要があります。スタッフが正確な記録を作成するには、療育のスキルや知識、報酬の算定要件の知識を身につけることが大切です。


以上となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今日も一日皆様にとって素晴らしい日となりますように。