令和9年度の報酬改定・制度見直しに向けて障害福祉サービス事業所が今から取り組むべきこと

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■令和9年度の報酬改定・制度見直しに向けて障害福祉サービス事業所が今から取り組むべきこと
―支援の質、適正な運営、持続可能な経営を整えるために―

こんにちは。行政書士浅井事務所の浅井順と申します。

今回は、来年の令和9年度に予定されている障害福祉サービス等の報酬改定や、今後の制度見直しを見据え、障害福祉サービス事業所が今から取り組んでおきたいことについてお伝えします。

人材の確保、職員の処遇改善、物価上昇への対応など、事業所を取り巻く課題は多岐にわたります。日々の支援を続けながら、制度の変更に向けた準備を進めることに負担を感じている運営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省が公表した令和9年度報酬改定に向けた主な論点では、サービス提供体制の確保、地域生活の支援、サービスの質の確保・向上、制度の持続可能性などが挙げられています。ただし、これらは検討の方向性を示したものであり、具体的な報酬単位や算定要件がすべて決定したわけではありません。
そこで大切になるのが、今後の情報を確認しながら、現在の運営を点検することです。本稿では、制度への対応と日々の支援を両立するための実務上のポイントを整理します。
参考:厚生労働省「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742921.pdf

1.制度変更の情報を整理し、対応する担当者を決める
報酬改定に備える第一歩は、情報の確認方法を決めることです。管理者だけが通知を読み、必要な対応をすべて抱える体制では、確認漏れや対応の遅れが生じやすくなります。
例えば、管理者が指定権者の通知を確認し、サービス管理責任者が支援に関する変更を整理し、請求担当者が算定要件への影響を確認するなど、役割を分担しましょう。確認した情報は、定例会議などで共有し、事業所として対応方針を決めることが重要です。
また、情報を整理する際は、「すでに適用されている事項」「適用開始日が決まっている事項」「今後の検討事項」を区別してください。検討段階の内容を前提に採用や設備投資を進めると、正式な内容が異なった場合に事業計画の修正が必要になります。
通知の名称、対象サービス、適用日、必要な届出、担当者、対応期限を一覧にしておくと、準備の進捗を確認しやすくなります。国の資料に加え、事業所を所管する指定権者の案内も継続して確認しましょう。

2.個別支援計画と日々の支援記録をつなげる
制度の動向にかかわらず、事業所の運営の中心にあるのは、利用者一人ひとりに必要な支援を提供することです。その内容を説明するうえで、個別支援計画と日々の記録は重要な役割を持ちます。
点検したいのは、計画に記載した目標と、実際の支援がつながっているかという点です。例えば、「本人が希望する地域活動への参加」を目標にしている場合、どのような活動を提案し、本人が何を選び、参加後にどのような感想や変化があったのかを記録します。
「変わりなし」「作業を実施」といった記載だけでは、支援の工夫や本人の様子が伝わりにくくなります。本人の希望、職員の働きかけ、その結果、次回の支援で配慮することを、必要な範囲で具体的に残しましょう。
また、本人の意向と家族の希望を分けて把握することも大切です。意思を表すことが難しい利用者については、表情や行動、日常の選択などを丁寧に確認し、職員間で共有します。記録を支援の振り返りに活用することで、計画の見直しにもつなげやすくなります。

3.運営指導に備え、必要な取組を年間予定に組み込む
運営指導への準備は、日常業務の中で進めることが効果的です。
人員配置、個別支援計画、サービス提供記録、各種加算の根拠資料に加え、虐待防止、身体拘束の適正化、感染症対策、業務継続計画(BCP)などについて、自事業所に適用される基準と実施状況を確認しましょう。
特に、指針や計画を作成した後の運用が重要です。必要な委員会、研修、訓練を実施し、参加者、内容、検討結果、今後の改善事項を記録しておく必要があります。欠席者への共有方法も決めておくと、取組を職員全体に浸透させやすくなります。
年度初めに年間予定を作成し、毎月の会議で実施状況を確認する方法も有効です。訓練で連絡体制の不備が分かった場合は、連絡先や役割分担を見直し、その修正内容まで残しておきましょう。
また、勤務形態一覧表と実際の勤務状況、資格証や研修修了証の保管状況も確認してください。職員の退職や休職などの変化があった際に、人員基準や加算要件への影響を早期に把握できる体制を整えることが大切です。
参考:厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等指導指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/260608-1.pdf

4.職員の定着と、支援を充実させる業務改善を進める
安定したサービス提供には、職員が働き続けられる環境が欠かせません。採用活動と併せて、現在働いている職員の負担や困りごとを把握しましょう。
例えば、記録の重複入力、申し送りの長時間化、資料を探す時間、特定の職員に集中している業務などを洗い出します。現場の意見を聞き、改善する課題を一つずつ決めることが、継続的な取組につながります。
厚生労働省が示す障害福祉現場の生産性向上では、当事者の視点に立ったケアの充実が重視されています。記録様式の統一や情報共有の改善によって生まれた時間を、利用者との対話、支援方法の検討、職員の研修などに充てることが大切です。
ICTを導入する場合も、まず解決したい課題を明確にしましょう。操作に不慣れな職員への支援や、個人情報の管理方法まで含めて運用を考える必要があります。
改善の効果は、記録にかかる時間、残業時間、申し送りの漏れ、職員の負担感などで確認できます。処遇改善加算についても、自事業所が算定する区分の要件と、賃金改善や職場環境の改善に関する実施状況を照合し、説明できるようにしておきましょう。
参考:厚生労働省「障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisansei/kihonteki_kangaekata_00001.html

5.サービスの特性に応じて、運営実態を確認する
共通の運営基準を確認したうえで、自事業所が提供するサービスに応じた点検を進めましょう。
就労継続支援事業所では、生産活動の内容、売上、必要経費、利用者に支払う工賃や賃金の関係を整理することが重要です。どのような仕事を確保し、利用者の希望や能力に合わせてどのような支援を行っているのかを、支援面と収支面の両方から確認します。
例えば、受注量が増えても経費や職員の負担が大きく、工賃の向上につながらない場合があります。作業ごとの収支や進め方を確認し、利用者が無理なく取り組める内容と、継続できる事業運営を検討しましょう。
共同生活援助では、本人の暮らしの希望、生活上のルール、金銭管理、地域との関係などを振り返ることが大切です。地域連携推進会議などで得た意見を、日々の支援や住居の運営にどう反映したかも確認します。
新規開設や定員増を検討している場合は、地域の障害福祉計画や指定権者の取扱いを確認し、物件契約や採用の前に相談を進めましょう。
参考:厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001602338.pdf

6.収支と加算への依存度を把握し、経営の見通しを立てる
報酬改定への備えとして、現在の経営状況を把握することも欠かせません。
毎月の収入を基本報酬と加算に分け、人件費、家賃、水道光熱費、送迎費などの支出と照合しましょう。複数の事業所を運営している場合は、法人全体に加えて、事業所ごとの収支を確認すると課題が見えやすくなります。
特に、特定の加算による収入が大きい場合は、その算定要件を継続して満たせているかを確認してください。報酬改定とは別に、人員配置や実施状況の変化によって算定できなくなる可能性もあるためです。
事業計画では、現在の報酬を基にした見通しに加え、利用者数の減少、人件費の上昇、加算収入の減少などを想定した試算を行うと、必要な対応を検討しやすくなります。これは将来の減額を予測するものではなく、経営上の変化に対応できるかを確認するための取組です。
新たな加算や補助金については、公表された要件、対象経費、申請期限を確認したうえで活用を検討しましょう。

7.年度末までの改善計画をつくり、実行につなげる
点検で見つかった課題は、担当者と期限を決めて改善計画にまとめましょう。すべてを一度に進めようとすると、現場の負担が大きくなります。
まず、人員配置、請求、利用者の安全や権利に関わる事項を優先して確認します。そのうえで、支援記録の改善、研修計画、業務の見直し、収支管理などを順に進めると取り組みやすくなります。
例えば、今月は加算の根拠資料と勤務実績を確認し、翌月は個別支援計画と記録の整合性を点検するなど、月ごとのテーマを設定します。改善後には、実際に運用できているかを確認し、必要に応じて方法を修正してください。
国や指定権者から正式な改定内容が示された際は、この計画に新たな対応事項を追加します。届出、職員への説明、利用者への案内、請求方法の変更などを整理することで、施行時の混乱を抑えやすくなります。

〇おわりに
来年の報酬改定・制度見直しに向けた準備は、現在の支援と経営を振り返る機会でもあります。
利用者の希望を支援につなげること、日々の取組を記録で説明できること、職員が働き続けられる環境を整えること、収支を把握すること。これらを着実に進めることが、制度の変化に対応する基盤になります。
まずは、自事業所で気になっている課題を一つ選び、担当者と期限を決めて取り組んでみてはいかがでしょうか。日々の改善を積み重ねながら、利用者が安心してサービスを受けられる運営体制を整えていただければと思います。
※本稿は令和8年10月11日時点で確認できる公表資料に基づいています。令和9年度報酬改定の具体的な内容は、今後の検討や正式な告示・通知によって変更される可能性があります。各サービスの義務、実施頻度、加算要件、届出手続きについては、最新の通知と所管する指定権者の案内をご確認ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日の内容が、皆様の運営の少しでもお役に立てましたら幸いです。

今日も一日皆様にとって素晴らしい日となりますように。