相続の際、相続人が1人しかいない場合や遺言書通りの相続が行われる場合には遺産分割協議は必要ありませんから、各種手続において遺産分割協議証明書等の書類を添付する必要はありません。
しかし、そうでない多くのケースでは、金融機関や登記手続きにおいて、遺産分割協議証明書等の添付が必要になりますので、ここではどういった場面でこれらの書類が必要になるのかをまとめてみました。
1.なぜ必要か
相続が狭い範囲で円満に完結し、相続人全員が互いの素性を良く知っているような場合でも、それを相続人以外の他人が判断するのは困難です。相続は被相続人の財産処分を伴う手続きなので、公的機関や金融機関は一層慎重にその妥当性を判断することになります。
すなわち、これらの機関が相続手続きの際に遺言や遺産分割協議証明書・遺産分割協議書の提出を求めるというのは、これらが「第三者に客観的に相続の内容を証明する書類」になるからなのです。
被相続人の戸籍謄本類や相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書等が必要になるのも同様の理由で、「誰の相続で、誰が相続人になって、相続内容はどのようなものなのか」を第三者が判断する資料になりますから、面倒でもきちんと所定の書類を揃えて手続きをしなければなりません。
2.遺産分割協議証明書が必要となる手続き
相続手続きにおいて、遺産分割協議証明書や遺産分割協議書が必要になる手続きは、主に下記のものになります。
遺言書がある場合にはこれらの書類が不要になることもありますが、遺言書と異なる内容での遺産分割を行った場合には協議書や協議証明書が必要になりますので、きちんと把握しておきましょう。
①相続登記
被相続人から不動産を相続したり処分して現金化して相続を進める場合には、一度不動産の名義変更をすることになります。
この名義変更に伴う登記を「相続登記」と呼びますが、法務局へ登記申請する際には遺言書や遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)を提出する必要があります。
②金融機関での預金払戻など各種預金相続手続き
金融機関の預金相続手続きをする場合、相続財産を誰が取得するのかについては厳密な審査が行われるため、遺言書または遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)の提出が必要不可欠です。
③証券会社の名義変更手続き
金融機関同様、証券会社での被相続人名義の株の名義変更手続きにも遺言書または遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)が必要です。
④自動車等の相続
被相続人名義の自動車を相続したり処分する際には、必ず名義変更が必要になります。この名義変更手続きには、一般的には遺言書または遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)の添付が要求されます。
ただし、自動車の評価額が100万円以下の場合は遺産分割協議書等に替えて自動車の査定書と申立書で手続きを進めることができますが、わざわざ有料の査定を頼むよりは遺産分割協議書等を利用した方が良いでしょう。
⑤相続税の申告
相続税の申告の際にも、基本的には遺言書または遺産分割協議書(遺産分割協議証明書)の添付が必要です。
ただし、申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合は、法定相続があったものとして相続税の申告をすることになるので、この場合は遺産分割協議が調った後で修正申告を行うことになります。そのため、このようなケースでは最初の申告の際には協議書等の添付は必要ありませんが、修正申告で必要になると覚えておくと良いでしょう。
以上